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Lee-Byung-hun addicted

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お見舞い

☆お見舞い


「揺…」
久々に会った揺は俺の知らない言葉でペラペラとしゃべっている。
「揺…わかんないよ…ねぇ韓国語でしゃべってよ」
俺が言っている意味がわからないのか…
彼女は不思議そうな顔をして首を傾げた。
「揺…わかんないの?俺が何言っているか…カンコクゴワカル?」
俺がカタコトの日本語でそう問いかけると、
揺は答えることなく俺に背を向けた。
そしてどんどん前に向かって歩き出した。
なぜか俺が伸ばした手は彼女には届かない。
「揺…待ってよ…揺」
揺の姿が遠ざかっていく。
「揺…揺…」


「ビョンホンssi…ビョンホンssi…大丈夫?」

うわごとで私の名前を呼ぶ彼を、
私はいたたまれず揺り起こした。
「う………ん。揺?やっと捕まえた…お前なんで俺を置いて行っちゃうんだよ…」

彼はそういうと、
彼の手を握っていた私の手に自分の頬をすり寄せて、
目を閉じたまま満足げに微笑んだ。

一体どんな夢を見たのだろう…

彼がまた深い眠りについたことを確認した私は、
膝の上の原稿に目を落とした。


「揺…何やってるの?」
揺は机に向かって一生懸命何かを書いていた。

そうか…あいつは忙しいんだったっけ。
俺はそれ以上話かけるのをやめた。
そして彼女の背中を見つめる。

後ろからその華奢な体を抱きしめて、
首筋に顔をうずめたら…どんなに気持ちがいいだろう。

俺がそんな姿を想像していると、
揺は突然振り返った。

そして一言
「ビョンホンssiのバカ」
えっ…俺が何をした…。


「ビョンホンssi…ビョンホンssi…大丈夫?」

「う……ん。せっかく我慢したのになんでバカなんだよ…」
またうなされて…
一体どんな夢をみているのか…
彼の寝顔の眉間に寄ったしわが切なくて、
揺はそっとくちづけた。
全く…
いくら何でも頑張り過ぎよ。
オフだって結局頼まれ事を断れなくて…
半分もゆっくり出来なくて。
その後はプロモーションと打ち合わせ…
いっぱいいっぱい忙しかったんだね。
私は仕事ばっかりしていて、
そんなあなたのそばにいてあげなくて…。

いっぱいいっぱい我慢したんでしょ…
だから具合悪くなっちゃって…。

彼の額にかかる柔らかい髪を撫でながら
彼女の目からは涙が溢れ出した。
そして彼の手の甲を濡らす。

「ん?なんだ?
濡れてる……
あ~あよく寝た…
あれ?揺、なんでいるんだよ。
仕事忙しいって言ってたのに…
えっ?お前…なんで泣いてるの?」
ビョンホンは何事もなかったようにそういうと
大あくびをした。
「なんでって…。
あなたが倒れたって聞いたから
慌てて飛んできたのよ…
過労って…大丈夫なの?」
揺はそういうと涙目をこすった。

「大げさだな…
ちょっと寝不足が続いただけだよ。
大したことないよ…
まさか…心配して泣いてたの?」
彼はベッドの上に胡座をかいて、
うつむく揺の顔を覗きこむと
ゲラゲラと笑った。
「もう…すごい心配したのに…
ビョン…」
「…ビョンホンssiのバカ…だろ?今日2回目だ」

「?」不思議そうに首をかしげる揺。

そんな揺に
「カンコクゴワカル?」
ビョンホンは日本語で尋ねた。

「何言っているの?
わかるに決まってるじゃない…
変なビョンホンssi」
揺はそう言って呆れ顔で笑った。

「だよね…わかるよね」
ビョンホンは嬉しそうに笑った。

「ねぇ」
「ん?」
「後ろ向いて」
「え?」
「いいから。早く」揺は戸惑いながら彼に背を向けた。
彼は彼女の背中をそっと抱きしめると首筋に顔をうずめた。
「どうしたの?やっぱり具合悪い」
揺は心配そうに向き直る。
「いや…こうしたかったから…
揺、それより仕事大丈夫なのか?」
「ああ…宿題持参」揺はベッドサイドに置いた原稿を手に取った。
彼女の肩を抱く彼にめくってみせる。
「何これ?」
目の前の冊子には彼の見慣れない言語が書かれていた。
「デンマーク映画の台本」
「揺、デンマーク語も出来るの?」
驚く彼に
「出来るってほど出来ないよ。
英訳台本の重訳だから、こっちは参考にするのに持って来ただけ…簡単な日常会話ぐらいよ」
揺はそういうとデンマーク語で
「愛してる」と囁いてにっこりと笑った。
ビョンホンの脳裏にさっき見た夢がよぎった。
夢で聞いた時は全然わからなかったけど…
今はお前がなんて言っているのか…不思議とはっきりわかるよ…。
揺…俺も愛してる。
彼はにっこり微笑んで彼女をギュッと抱きしめた。


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